非常にだるい・めまい・汗が出るなどなど

バセドウ病とその治療

 

 なぜか近年、「どうにも表現しようがないんですがだるくて」という訴えの人が多くいます。倦怠感が強いということもあれば疲れが取れないということもありますし、「心臓がドキドキして更年期なのかも」程度はまだ軽い方で突然にその場でへたれ込んでしまうような体調がコントロールできないケースや、大量に食べて寝ている時間も長いのに少しずつやせていってしまうようなこともあります。

 かなりのケースが「バセドウ病」なのですけど、どうしたことか病院で発見してもらえずにめまいも伴っていたならメニエル病だとかひどいと聴力が落ちていないのに突発性難聴だとかいわれて、ずるずると経過している症例に多く遭遇しています。「バセドウ病」は鍼治療が非常に得意としている分野の病気です。

 

「バセドウ病」とは

 まずは専門的に、バセドウ病を「南山堂医学大事典」から抜粋してみると、

 びまん性甲状腺腫があり、甲状腺ホルモンが過剰に産生されることによる諸症状を中心とし、これに眼球突出、浸潤性眼症などの眼病変、限局性粘液水腫などの皮膚病変を合併しうる状態をバセドウ病という。原因は自己免疫異常により甲状腺TSH受容体に対する抗体が産生されて、あたかもTSHと同じように甲状腺を刺激するため甲状腺ホルモンの過剰産生および分泌が起こり(甲状腺機能亢進症)、甲状腺ホルモン過剰の諸症状、すなわち組織の熱産生の亢進、交感神経過敏状態をひき起こす。眼球突出、浸潤性眼症や限局性粘液水腫も自己免疫性原因による。この疾患には罹患しやすい体質的素因がある。バセドウ病の罹患の頻度は0.4〜0.8%、女性は男性の3〜8倍多い。(以下省略)

 

 この専門的説明では「なんのこっちゃ」ですね。要するに甲状腺ホルモンが出すぎている状態のことを「バセドウ病」というのですけど、甲状腺ホルモンというのは新陳代謝を促しているホルモンのことですから、過剰に新陳代謝が行われてしまっている状態なのです。

 つまり、新陳代謝だけが勝手に進行しているものですから、たとえば階段を上っただけなのに山登りでもしたのかと思うくらい疲れを感じたり、ちょっと動いただけなのに心臓のどきどきがなかなか収まらなかったり、お風呂へ入ると普通は顔が赤くなるものがしんどくなってしまい逆に真っ青になったり、緊張しただけで大量の汗も収まらないとか、とにかくすごい運動をしたわけでもないのに体力を消耗している感じがあります。強い肩こりを感じるだけでなく、不眠や頭痛を伴うことも珍しくありません。症状が進むと常にだるいことから気分が高揚せず、鬱病に間違われていることもあります。

 これらに該当していればバセドウ病の疑いが強く、また常には症状がなく好調なときには運動もできるのに不調になると寝込んで起き上がれないほどの逆になるケース(橋本病)もあるのですけど、同じく甲状腺ホルモンの異常によるものです。

 

東洋医学からは

 診断は、三大徴候、頻脈(脈拍数がかなり早い)・眼球突出(本当はこめかみの脂肪が落ちているのでそのように見えるだけ)・甲状腺腫大(のど仏の少し下側で甲状腺は左右にあるのでどちらも大きくなっていること)を確認します。そして、決め手は脈状です。

脈拍の断面図 上はきれいなサインカーブ、真ん中は幅の狭いサインカーブ、下は直角三角形が重なったような鋭い脈の形

 図は脈を横の断面から指に当たってくるイメージを表したものです。上は綺麗なサインカーブで平脈を表しており、数脈(脈拍が早いこと)になっても通常は中央のように幅が狭くなるだけです。ところがバセドウ病は下のようにあたかも直角三角形の形になっていて、脈が指についてくるときには鋭く立ち上がり落ちていくときは垂直のようにさらに早く、そして最大の特徴は脈が落ちきる前にもう次の脈が立ち上がってきている感じがすることです。数例経験すれば脈状だけで瞬間的に診断できるようになります。

 

具体的な治療は?

 漢方の生理・病理からバセドウ病は、肝の疏泄(そせつ)作用が暴走していると考えられます。疏泄作用というのは、心臓が血液を全身へ送り出しているのとは別に全身に様々な栄養や情報を頒布させる働きのことで、頒布しなくてもいいのに頒布が過剰に行われるために心臓がつられてドキドキしたり、体力だけが消耗されてしんどくなったり肩こり・頭痛・不眠などが連鎖的に発生をしてしまいます。ですから、疏泄作用を司っている肝経の調整をしてやればいいのであり、数脈(頻脈)なので陽経からのアプローチの方が効果的となり剛柔関係に当たる大腸経でも偏歴へ衛気の手法を行うケースが圧倒的に多くなっています。西洋医学では服薬だと三年以上、あるいは手術やアイソトープと長期の治療となるのですが、陽経からの治療を試みていなかった時代でも五回程度で症状は抑えられていたのですが、“ていしん”も用いることで現在は半分程度で回復してもらっています。

 しかし、内分泌(ホルモン)の病気は症状が治まった段階で放置すると数ヶ月で再発しやすいので、必ず再発防止のための治療回数まで最初から約束に含めてもらいます。ほとんどのケースで「あれは一体何だったのだろう?」とお互いに笑える日がすぐ迎えられているので、焦らずに治療へ取り組んでもらうことが大切です。

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