国際医療フォーラムに寄せて

  「医とは自然の僕なり」とは医祖ヒポクラテスの言葉であります。国際的に医療の将来を考えるということですが、私はまずヒポクラテスの言葉を引用したいと思います。それは、科学全盛の時代にあって現代人が古代人よりも遥かに進歩しているなどと大変な思い上がりをしていると感じているからなのです。

  人間の身体が治るということについて、原点に返って考察をしてみましょう。そうすれば病気や痛みや変形や傷など全ての病偏が治る力は、自然治癒力以外にはないことに気付くことでしょう。例えば盲腸炎の緊急手術を受けたとします。腹膜炎を起こす寸前で切除されたなら間一髪というところで「先生、ありがとうございます」という言葉も自然に出てくることでしょうし、それで普通なのです。

  ところが、抜糸をした時に自分で引っ付いててくれないと傷口が開いてしまいこれでは治ったことにはなりません。もっと身近な例で言いますと手に切り傷をしたとすると大抵の場合は救急テープを張りますが,確かに救急テープはバイキンが侵入するのを防いでくれますし傷口の保護もしてくれますが,傷口そのものは自分で着かなければならないのです.つまり,現代医学的な処置では「治す方法は教えてあげられる、治るための手伝いはしてやれる」という表現が最も適当だと思います。

  もっと別の具体例で表現しますと、花粉症で悩んでいる人達が大勢いますが、花粉症の人達だけに集中的に花粉が意地悪く降るなんて現象はありません。そうすれば特定の人達だけが花粉症になるということはどういうことなのでしょうか?別に花粉症だけでなく赤痢でもコレラでも病原菌なら何でもいいんですよ。常に我々の周りには菌がウヨウヨしていてたまたま身体の前をかすめて行っただけの話で、「菌がかすめて行ったくらいで感染するような弱い身体にしておいたんは誰や」という話が常に抜けているのです。

  このような事実はみんな知っていながら恐ろしくて知らんぷりをしているだけなんだと思います。だってベッドに寝て「先生、お願いします」と喋れば病気を治す責任は医者に移ってしまう現状は楽だし、医者は医者で「病気を治す本当の力は自然治癒力以外にはない」ということを忘れてしまっていますから、検査結果や知識の中で迷子になって強がりで絶対的権力者を演じていれプライドは守れますからね。診察をしても処置法がハッキリしないから、あるいは裏づけを取る為に検査をするくせに「結果は3日後ですから」などと苦痛に耐える患者に平気で言い渡し、おまけに薬だけは出せるなんて背筋に悪寒が走るくらいの恐怖を覚えます。

実際に私も恐いのですが、分からないことをハッキリと「分かりません」と言える医療人が何人いるでしょうか?

 

  また、こんな説明もできます。医療者も患者もコンプレックスの固まりであり、それを乗り越えようとしていないのです。医療者からは例えば「癌の末期だから・・・」と表現していますが、病巣が進行していることは確かでしょうが「出来ることは何もない」と勝手にレッテルを張っていますし、検査をすれば自分の気に入るデータばかりを集めたがる傾向は否定できません。患者からは「私は病人なんだから・・・」と勝手なレッテルを張り、病気の原因は必ず本人にあるくせにまるで災難に出合ったような顔で当然のようにしている。双方の勝手な言い分からは「「医療によって病人の身体を押さえ付けてコントロールしなければならない」かのような風潮になり、しかも、それに満足しているのです。

  さて、現代医療の矛盾点だけで相当の紙面を裂いてしまいましたが、話題の臓器移植や薬害についての問題点を全て包含できるから敢えて何度も説明をしたのです。それでは、私が提唱する国際的医療の将来についてですが、それは既にホリスティック医学と呼ばれる分野で一部実践が始まっているように『心』を重要視した体系へと移行することです。私の治療室で実践していることなのですが、子供の治療の場合には必ず喋れる子供には自分の名前を大声で宣言させています。それは、いかなる場合でも洗脳は駄目ですが考える力はどの生命体でも持っているのです。ですから、名前を宣言することにより「今、ここへ何をしに来ているのか」と考えさせ、患者に「やる気」を起こさせるのです。

  これから国際的に医療の将来を考える時には、あなた達は患者・私達は医療者という垣根を作らずに『心』を持って接すること。すると、自然に予防医学は徹底されるだけでなく、「健康的に死を迎える」という概念も立派な学問となるとでしょう。

 

 

 

読売新聞社    (ワープロ原稿ですが規定に沿って書きました)。

  国際医療フォーラムの募集記事を見て、学生対象であるがどうして現役の医療従事者ではいけないのか・鍼灸師ではどうしていけないのかと質問をしたのですが解答が送られてこなかったので、勝手に論文を投稿します(返信用封筒まで同封したのに回答を寄せなかったのですから、審査規定外だと門前払いすることは絶対に許しません)。

  返信用封筒を利用して審査の経過だけでも報告をお願いします。

〠522−02  滋賀県彦根市高宮町日の出1406    二木  清文



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