間違いだらけの知識集“素人療法”は危険です(その2)

症候名と病名の違いについて

「症候名」??「病名」??これって違うんですか?と最初からクエスチョンマークの嵐ですけど、はい、違うんです。腰が痛くて最初に整形外科を受診する人は多いものですが、診察の結果「座骨神経痛ですねぇ」といわれてそれを病名だと信じる人がほとんどなのですけど、この「座骨神経痛ですねぇ」から続く会話は言い渡す側にまず大きな問題があるのですけど聞く側にも実は大きな勘違いがあります。

今回は本当に病気のことを説明してもらっているのかどうかを聞き分けるヒントについて書いていきます。

 

症候名って?

 最初に座骨神経痛という名称を出しましたけど、実はこれ病名ではなく症候名といいます。

例えば「腹痛」といわれたなら、これを病名と記憶してしまう人はいないでしょう。腹痛というのはお腹が痛いというだけで、具体的には胃潰瘍なのか腸捻転なのか胆石かなどはとりあえず別問題で、まず痛みがどのような性格のもの(急性なのか慢性なのか、急性の場合には内臓出血を伴っているような外科的処置が必要なのか痛み止めで保存をすべきか)をまず判断します。まず判断をするための大まかな症状の呼び方を「症候名」といいます。

『症候』を辞書で調べると、「病気のとき現れる、種々の肉体的・精神的な異常」とあり、これらを大掴みにして分類することだと、やはり解釈できます。そして具体的な病名は症候から探っていきます。

 

病名とは?

腰痛や膝関節痛や五十肩なども、これは症候名です。膝関節痛だと文字通り膝が痛むのであり、具体的には変形をしているのか靱帯損傷を起こしているのか半月板が割れているのかなどで対処が変わってきます。五十肩というのは中年以降になると肩関節の痛みの発生することが多くなるもので、その総称であり外力によって傷めた以外は具体的な病名そのものが判断されないことの方が多いものです。そのため五十肩は治りにくいのです。具体的な病名が付けられないために症候名があるとも言えます。

最初の座骨神経痛ですけど、これは太股の裏側中央に走っている神経が座骨神経なのですけど、ここの部分に痛みがあることを表現しているだけです。足の神経は全て腰から出てきているので、腰を治療しなければならないということが分かります。そして具体的には椎間板ヘルニアなのか腰椎すべり症なのか脊柱間狭窄症なのか脊椎分離症なのかなどはその後の診断であり、これが痛みの発生している本体であり病名です。腰痛は腰に痛みが限局しているだけのことで、分類的には全く同じことになります。もちろん病名ごとに治療法も異なってきます。もし単に「これは座骨神経痛ですねぇ」と言い渡されたというのは、診察は受けても何も診断をまだ受けていないことになります。

ただし、腰椎すべり症は太股の外側に痛みが発生してくるものなので、座骨神経痛にはなりません。ところが太股の外側が痛むのに座骨神経痛だと言い渡されたケースは何度もありましたから、単なる聞き間違いではないはずなのですけど、素人さんには何を行ってもいいということではないはずなのに同じ医療陣としては心穏やかではありません。そして日常生活に困難を来すほどであるなら痛み止めというのは必要な処方ですけど、診断もせず安易に痛み止めだけを続けるというのは健康保険の無駄遣いだけでは?

 

どのようにすれば聞き分けられますか?

けれど専門知識のない患者さんが「座骨神経痛ですねぇ」と言い渡されたなら、「はぁそうなんですね」と思わず返答をしてしまうでしょう、きっと。無理のないことだと思います。

ここでいい加減に終わらせない対策としては、「それは病気の名前なんですね」ともう一度具体的に確認をすることです。病名は医者しか判断できないものであり、鍼灸師である我々は「おそらくこの病名になるはずです」ということを告げることはあっても断定はできないのですから、病名は何度確認されても悪いことではないのです。

それでも病名が確定されていた方が全体を把握するのが容易となりますし、また患者さんへの説明も病名を基準に話を進めた方が正確となりますから、鍼灸院としても病名は是非とも知りたいところなのです。そしてもう一つ大切なことは、病名が分かったとしても治療法のないものは多く、そのために鍼灸治療が存続し続けています。

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