ややこしいからこそ知っておいてほしい

 

腰痛の知識、あれこれ

 

 地球上で完全な二足歩行をする生物は人類しかなく、両手が自由に使えるようになって文明を得た代わりに腰痛というほかの生物にはない問題を抱えることにもなりました。肩こりと並んで非常に多くの人の悩みになっている腰痛だからこそ、正しい医学知識を持ってもらいたいとまとめました。

 それなりに注意点も書きましたけど、ご自分に当てはまるものだけをまずは覚えていただければ十分なので、時々読み返してください。

 

まずは温めないこと

 「お風呂へ入ると痛みが楽になるので」と、入念に入浴したり時には熱いのを我慢してでも全身を温めている方がおられますけど、自殺行為そのものだと強く警告します。

 腰痛を感じたとき、あまりの激痛でなければ最初は自然に治らないかとしばらく様子を見るのは仕方ないとして、「素人療法は危険」だとわかっているのに勝手に回復を試みるのはまず成功しません。「痛い」ということはその場所に炎症が発生しているということであり、炎症していることをもっと簡単に表現すればその場所が腫れているのです。では、腫れているものを温めたならどうなるのでしょうか?そうです、もっと腫れてしまいます。

 お風呂へ入れば確かにそのときには腰痛に限らず痛みが消失するか軽くなるのですけど、これは腫れている箇所よりもお湯の温度の方が高いので一時的に麻痺をするだけなのです。お湯へ入っている間だけ、痛みがぼーっとしてしまうのです。ところが元々が腫れているのですからそこを温めたなら余計に腫れてしまうのは当たり前で、そのため「痛みが楽な間に休んでしまおう」と布団へ潜り込んだ頃から余計に痛みがひどくなってしまうのです。

 持続的に痛みを感じるなら、絶対に温めないことです。一度温めて腫れがひどくなってしまったものは、入浴を数日避けてゆっくり冷えるのを待つのが最善です。冬場でどうしても腰が冷えてつらいという人は、体温の維持はほとんどが内臓の働きによるのですからお腹へカイロを入れた方が内臓の働きを助けるので全身が温かくなり、結果的に腰も温かくなってくれます。

 

座骨神経痛は病名ではありません

 「今までの治療でどんな風に説明されてきましたか」と質問したなら、「座骨神経痛だと言われました」という答えがあるのですけど、これは何も説明されていないのと同じです。腹痛はお腹が痛いことであり頭痛は頭が痛いことであり、これらは症候名といってまず大づかみに状態を把握するための区分であって、具体的な胃潰瘍や腸捻転や腎臓結石とか緑内障や脳卒中など実際の病気はその後に探っていくというのが手順です。

 座骨神経というのは太ももの裏側の中央に走っている大きな神経のことで、この部分に痛みを感じるケースが多いのでまず大づかみにするための呼び方が座骨神経痛ということです。腹痛や頭痛と同じレベルのことを表現しているだけなので、別に医療関係者がわざわざ診断しなくてもわかることなのです。「ではどうして座骨神経痛が発生してきているのか」を探れることが診断力であり、病気の本体を見極められなければ完全に治すことは難しいのです。簡単に痛み止めだけ処方されて経過観察しかされないというのは、本体が全く見えていない証拠なのです。

 

腰椎ヘルニアの親戚で腰椎すべり症

 腰痛で最も多いのは、ぎっくり腰と骨盤のずれたものと腰椎ヘルニアです。ぎっくり腰は腰の筋肉が痙攣(けいれん)を起こしたもので、時間が経過すればある程度痛みが軽くなるケースが多いものの、治癒するわけではないので治療を受けるべきです。「ぎっくり腰は癖になる」というのは間違いで、治癒していないので繰り返すだけなのです。骨盤と腰椎ヘルニアについては、当院の「腰痛の話」に詳述があります。

 ここで「腰椎すべり症」という、解剖的に全く違う病気があります。しかし、素人さんには同じ腰痛であり足の痛む部位が太ももの真後ろではなく外側になるだけなので、腰椎ヘルニアの親戚と思っていただいて構いません。ところが足の痛む部位が違っているのに「座骨神経痛と言われた」というケースがまたまた多く、これは素人を馬鹿にしている発言なので同じ医療関係者として怒りを感じます。腰椎すべり症の場合、牽引を受けると余計に痛みがひどくなってしまいます。

 

困った腰椎分離症

 この腰椎分離症という腰痛は、痛みが背骨の周囲にしか現れないという特徴があります。そして痛みが強くて「これは困った」と思っていたなら、ある日突然に「あれっ」と痛みを感じなくなります。「おぉこれはいいぞ」と油断していると、また突然に強い痛みが数日続く、そしてまた痛みを感じなくなるというパターンを繰り返します。

 治療を開始しても痛みが出たりなくなったりのパターンはどうしても出てきてしまうので、なかなかやっかいです。そのため週に一度ずつ曜日を固定して継続治療するのが理想的です。「痛みに一喜一憂しないでください」と説明はするのですが、まぁ難しいことは察します。

 

 まだまだほかにも腰痛の種類があり着目点もそれだけあるのですけど、どうしても紙面で伝えておきたいものをピックアップしました。大切なことは痛みは我慢していても勝手には回復してくれないので素早く治療を受けていただきたいことと、回復の途中で中断されると慢性になってより回復が困難になってしまうことを覚えておいていただきたいです。

 

 

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