腕の痛みを例に、ナソ治療の実例


 まず、ナソ治療全般については 滋賀夏期研へ向けて、ナソの臨床実践1 に、考え方の変遷から最新情報までを発表してあるので、こちらを参照してください。このページでは「肩甲骨操作」と呼ぶことにした仕上げ段階の実技に的を絞って書いてあります。

肘を脇から離しながらワインの瓶を持ってつごうとしている写真  腕が痛むという症状にも色々あって、例えば手首が痛む・肘が痛む・肩関節が痛むだけでなく、ある角度にした時だけが痛む・力を入れた時だけに痛む・何もしていないのにズキズキするに加えて、肘と手首が同時に痛むなどなど、千差万別です。そして痛みで腕が使えないということは日常生活への影響が非常に大きく、放置できません。
 しかし、解剖学的に考えれば非常に当たり前のことなのですけど、腕が痛むという場合のほとんどは首・鎖骨・肩甲骨周囲の「上肢体」と言われる部分を治療するだけで回復させることができます。例えば上の写真ではワインですが「肘が痛くてビールをつぐこともできない」と訴えて来院される患者さんは多いものですけど、夜も眠れないほどの痛みでない限りは肘のことだけでビールを飲むのを諦めるはずがありませんよね(笑い)。

ひじを脇に付けて締め、ワインをつごうとしている写真  そんな時にはどうするかといえば、右の写真のように「脇を締める」という状態にしてやれば痛みを感じていないはずです(これでビールが飲めるぞ、笑い)。これはフライパンを持つのが痛かったり荷物を持つ時に痛む場合など、肘を脇腹へくっつけるということで無意識に行っていることです。

腕はなかなか故障しない?

 さてゴルフで地面を思い切り叩いてしまいました。その後に痛みが肘や肩関節に発生してきた時に自己流のマッサージをしたりリハビリと称して体操をするのでしょうけど、そんなもので回復しないのは当たり前で腕を振り回すのに一番大きな力を出していたのは胸や背中の筋肉であり、衝撃もダメージも胸や背中の筋肉の方が遥かに大きいからです。だから治療は背中を中心に行わなければ治る道理がありません。肘や手首にレントゲン検査をしても何も異常が見つからないのは、これは原理からすれば当たり前なのです。
 本当に肘そのものを傷めていたなら脇を締めようが空けていようが関係ないはずで、脇を締めて途端に痛みが消失するということは肘には原因がないという証拠です。腕というものは自由に動き回れるように設計されているため、しかも腕自体の重み以外は重力も掛からないので骨折でもしない限りは腕に痛みを感じたとしてもその部分に故障はほぼないのです。パソコン時代に「タイピストの腱鞘炎」という話はないはずなのに、相変わらず手首が痛いといえば「腱鞘炎です」と言い渡している整形外科は何も診察をしていない証拠です。テニスエルボーなど肘の痛みや五十肩といわれるものの大部分も肩甲骨操作を行うだけで症状は回復します。

肩甲骨の内側に配当部位の指を術者が当てている写真

腕の場合、概ねの対応になっているか

 治療室では実際に患者さんに腕を痛みが出るように動かしてもらい、該当する治療箇所を強く押さえることで瞬間的に痛みが消失することを体験してもらっています。該当部位は概ね写真の通りで、肩甲骨内側の上から親指・人差し指・中指・薬指・小指の順番となり、肘や肩関節についてもこれを参考とします。つまり指の痛みや「断発指」という症状についても治療できます。

二木式奇経鍼そのものの画像   二木式奇経鍼を手に持っている写真


 さて具体的に肩甲骨に沿ってどのような実技をするかなのですけど、左の写真は二木式奇経鍼そのものの写真で、右の写真はこれを手に持っているところであり、この太い押し付けることを目的に開発したていしんを用いると安全で力強い施術が可能となります。動画でさらに解説しています。
二木式奇経鍼を用いて、肩甲骨操作の実例 youtube 二木式奇経鍼による肩甲骨操作の実技、内側も youtube

過信だけはしないで

 しかし、腕の全ての症状が腕の付け根から治癒できるわけではありません。野球肘でも軟骨が剥離してしまい「関節ネズミ」となってコロコロ動き回るようになってしまったものは手術によって除去をする必要がありますし、突き指や骨折もそれぞれの処置が必要です(別ページで解説)。また肉離れも専用の処置が必要です。要するに適切な診断が前提ということになるのですが、それでも大半の症状は肩甲骨操作で大きな効果が期待できます。


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