奇経(二経)治療の取穴部位

 日本の鍼灸業界で一般的に「奇経治療」と呼ばれているものは、中期の古典に八総穴の二つを組み合わせるという記載から主に昭和の先輩たちが必死に研究していただいた成果です。私も下積み修行時代にこの方法で臨床経験が重ねられたのであり、難病の回復に役立つなど素晴らしい実績が残されています。多くの先輩の努力に感謝です。
 ただ、忠実に古典へ基づくなら治療法は何も書かれていないのであり、様々な方法が考案され実践もされています。「にき鍼灸院」でも限定したケースながら一経での奇経治療が実用化できています。この方法だと磁石テスターも不要で施術が簡便な上に、自宅補助もお灸ではなく10円玉を極めて短時間ピンポイントで当てるだけという成果が出ているので、記載を分けることにしました。そこで、より具体的に治療体系がわかるようにと「奇経(二経)治療」という表記に変更させてもらっています。


 ここでは「奇経(二経)治療」で用いられる取穴を、文章だけでなく写真・イラスト・ビデオ(youtubeもしくはWindowsメディア.asf形式=ダウンロード可能)の四つで掲載しています。下部のリンクから必要な組み合わせのページにジャンプし、素早く部位が確認できます。この部位は奇経(二経)治療のために正経とは違った取穴をしているものがあります。それこそが奇経(二経)治療を活かすためのコツでもあります。
 このセクションは専門家向けですが、素人の方にも「10円・1円治療法」という名前でも有名になった奇経(二経)治療です。緊急時には手元にある道具だけで応急治療が可能となります。ただし、「即座に誰でも治療が出来る」という意味で掲載しているのではなくあくまでも資料ですから、素人の患者さんは専門家の指示の元で、ご活用ください。

内関穴に10円をセロテープで貼り付けている写真   外関穴に1円をセロテープで貼り付けている写真

奇経(二経)治療の概要

 まず旧版「漢方鍼医会入門講座テキスト」(絶版)より抜粋して、奇経(二経)治療の解説をします(このセクションは管理人の執筆によるものです)。

 (本文) 「奇経」というくらいですから正経十二経絡とは異なった流注を有している奇経八脈が古典に記されています。「正経満逸する時は奇経これを受け」とありますから、例え話にすれば大雨で洪水が発生しそうになったので普段はあまり使っていない貯水タンクへ臨時で雨水を貯えることにより洪水の危険性は一瞬で解消される現象を想像してください。溢れそうになっているものを奇経に待避させることにより正経の歪みが擬似的に解消されるわけで、その効果は瞬間的ですから、ぎっくり腰で全く動けなかった患者さんが簡単に起き上がったりするなど治療家までビックリするようなことさえあります。
 しかし、擬似的に解消された歪みですから漢方はり治療の特色である「生命力の強化」が行われるわけではありませんので、奇経への働きかけを止めてしまうと再び歪んだ状態に戻ってしまい、弱点である「持続力がない」ことを露呈してしまいます(本文ここまで)。

 つまり、奇経(二経)治療とは正経の歪みを奇経側へ一時的に移動させることを意味しています。正経の歪みは解消されるのですから、様々ある苦痛のほとんどを感じなくなってしまいます。ですから、奇経(二経)治療には瞬間的でしかも劇的効果が期待できます。
 ところが、治癒を目的としたものではなく歪みを奇形側へ一時的に移動させているだけなのですから、救急法・補助療法として用いることに大きな意義はあっても治療の主役にはなり得ないことを、まずは押さえておいてください。

もう少し平易に解説

 本サイトの各所で素人さん向けには、「東洋医学の基本的な考え方は身体というものは常に自分で健康を保とうとしているのでバランスがよければ良好でバランスが崩れれば病気となるのです。つまり、治療は全体バランスを整えるのが第一の目的であり、痛む箇所へ直接手を下すのは最終調整の段階だけなのです」のように解説をしています。
 それで、通常は「本治法」という手足の重要なツボで全体バランス調整から入るのですが、応急処置として瞬間的にバランスを整えることの出来る方法が奇経(二経)治療なのです。
 手足のツボの組み合わせと異種金属の貼付で奇経(二経)治療は成立しますから、治療室ではPM鍼や亜鉛と銅の円盤やお灸などを用いますが、電話の向こうであれば10円玉と1円玉で代用することも可能だということです。実際に夜間の激痛に対して電話口で指示することにより回復して頂いた経験が何度もあります。ということで、治療スタイルによってはかなり積極的に取り組まれている先生もおられます。ただし、あくまでも救急法・補助療法です。

取穴法と注意点

 取穴については、写真・イラスト・文章と動画を参照して位置を確認してください。この時は拇指でも示指でも構いませんから押し込みながら圧痛を探します。奇経(二経)治療では強い圧痛点が重要です。
 奇経(二経)治療は、二つの奇経を組み合わせて用いることが特徴です。そして二つの奇経の主従関係がうまく合致して、初めて効果が発揮されます。主従関係を含めて、選経が正しいかどうかは磁石や亜鉛と銅の円盤などのテスターにより確認が出来ます。毎回充分に奇形病症と組み合わせを検討し、テスターによる判定をしてください。奇経の組み合わせや主従の決め方や奇経灸など、詳細については 資料 入門講座「『奇経(二経)治療』について」 をご覧ください。


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